唐揚げのカルピス和え

ーあれは2011年、私がまだ大学生の頃の話。

当時通っていた大学には3つの食堂があった。
その中でも特に気に入っていた食堂では毎日豊富な日替わりメニューがあり、よく通っていたのを今でも覚えている。

そして初夏の6月、それは突然やってきた。
いつも通り2限の講義が終わり食堂に向かった私の目に衝撃的なメニューが入ってきたのだ。

「唐揚げのカルピス和え」



ー唐揚げのカルピス和え
通常交わることのないその組み合わせに当時の衝撃は凄まじいものがあった。

(どう考えても合わないだろう・・・どう考えても合わないだろう・・・)
心のなかではそう思っている。が、しかし溢れ出る好奇心を抑えることはできなかったのだ。
気づけばいつもの日替わりメニュー専用の行列に並んでいた。

たくさんの学生がひしめき、長い行列を待ち、ついに私の注文のときが来た。
宣言する、そう高らかに。

私「日替わりの・・・唐揚げのカルピス和えをください!」

・・・ほんの少しの間があり、注文を受けたいつも笑顔の食堂のおばちゃんが一瞬悩んだような顔をした。
そしてこう告げたのである。

「ああ、カルビ和えね」


そう、カルピス和えではなかった。後で戻って見たけどやっぱりカルビ和えだ。

私の猛々しい宣言は前後の学生だけでなく、隣のラーメン専用行列の学生にも聞かれてしまっている。
もはや私の思考は完全に停止してしまい、「あ、はい」という言葉しか出なかった。
その直後のことはもう覚えていない。

カルピス和えが幻想であることへの落胆、意味不明な注文を晒したことによる羞恥心、自らの見間違えへの怒り。
様々な感情がひしめいていたが、ただ一つしかし胸の内に秘めた思いがある。

「ー唐揚げのカルピス和えは、俺が完成させる」


材料(2人分)

鶏むね肉 350グラム

■下味用
醤油 大さじ1
酒 大さじ1
カルピス 思いの限り
片栗粉 大さじ3
薄力粉 大さじ3

■和える用のタレ
ごま油 大さじ1
みりん 大さじ1
カルピス 切ない記憶と共に


1.鶏むね肉下準備

唐揚げなら普通鶏もも肉だが、今回は冷蔵庫にある鶏むね肉を使用。
脂質を減らし、高タンパク・低カロリーメニューに仕上げるため、皮を取り除いておく

分厚い部分を半観音開きにして、一口大に切り分けていく。
切り分けた肉は軽く包丁で叩いておく。

 

 

2.下味をつける

切り分けた肉をボウルに入れ、醤油、酒を入れる。
そしてここでカルピスを投入しておく。

そしてじっくり混ぜ合わせて10分ほど置いておく。

 

3.衣をつける

10分置いた肉に薄力粉と片栗粉をかけて再度混ぜ合わせる。
しかし問題がここで発生したのであった。
カルピスと薄力粉及び片栗粉がダマになってしまい、うまく粉がつかなかったのである。

仕方なく追い片栗粉でカバーする。

 

4.肉を揚げる

はじめにフライパンに油を敷いてあたためておく。

ある程度温まったら肉を投入。
いいぞ、まだマシな料理に見える。
片面を揚げたらひっくり返していい感じの色になるまで待つ。
 

このあたりでおかしな匂いただよいはじめたが気にしない。

5.タレを作る。

一度唐揚げを取り除き、油を拭き取ったらタレを作る。
ごま油、みりん、そしてここでもカルピスを投入する。

6.和える

ラストスパートだ。
タレの中に唐揚げを再投入し、一気に混ぜ合わせる。

 

ここで一度味見をする。が、おかしい。

なんの味もしないのである。

ここで急遽作戦を変更。
タレがまだある内に醤油を追加して味変を試みる。
加えて先日作った照り焼きを思い出してマヨネーズと刻み海苔を投入することを決意。
RTAにて培ったリカバリー能力が発揮されたと考えられる。

 

完成


同居している彼女が帰ってくる前にどうにか作り終えることができた。当然このことは伝えていない。
もはやカルピス和えを作るより、唐揚げの甘辛タレ和えのフェイク料理を作っている気分だ。

感想のほどを聞いてみた(今書きながら聞いている)

「おいしかった。」

驚きであった。舌は大丈夫なのだろうか?
正直黙っていたが食事中、気が気じゃなかった。
自分で作ったのもあり、カルピスを投入するそのシーンを思い出し喉を通すのを何度かためらった。
普段食べるのがものすごく早いほうだがかなりゆっくりになってしまい、不審がられるのではないかとひやひやした。

ネタバラシをした後にこう言われた

「カルピスの味しなくない?」

そう、その通りである。
今回の敗因として途中から味のごまかしに逃げてしまい、肝心のカルピスの味がどこかへ消えてしまったのである。
微妙に甘かったから砂糖の代わりにはなったのかもしれないが・・・。

こうして9年越しの私の思いは遂げられたのであった。
しかし本当にこれでよかったのだろうか?
まだカルピス和えは研究の余地があるように思えた。しかしもう私に挑戦する気力はない。
願わくば新なるカルピス和えの登場を胸に秘め、ここに筆を置く。

-料理, 日記

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